事業承継を進めるにあたって「事業承継計画書」の作成は、事業承継の設計図を作成することを意味します。
事業承継には長い期間が掛かり、様々な意思決定や対策をしなくてはならないこともあり無計画に進めるわけにはいきません。また、計画自体が頭の中にあったままでは経営者と後継者の意思疎通を図ることが出来ません。
そこで、この事業承継計画書を作成することによって、会社の現状や関係者の思いを見える化し、具体的な行動に移すための準備を整えることができます。
目次
事業承継計画書のフォーマット
事業承継計画書には特に決まったフォーマットがあるわけではありませんが、一般的なものとして中小企業基盤整備機構が用意している「事業承継計画書(タイプB)」があります。
他にも、各地の商工会議所などの公的団体がWebサイト等で公表しています。また、銀行・信用金庫や事業承継センターなどの民間支援会社でも、独自に事業承継計画書のひな形を用意しています。
タイプBは、事業承継の実施までに、会社や経営者・後継者がどのように変化していくのか、その予定を年次でまとめた工程表となっています。
また、「事業承継計画書(骨子)」も用意されており、併せて作成することで自社を分析し見える化を行うことができます。なお、骨子を作成することは特例承継計画書の作成にも繋がります。経営承継円滑化法の検討も考えているのであれば作成しておくことで活用できるかもしれません。
しかしながら、事業承継計画書 タイプBは事業承継を本格的に進めていく上では足りない項目も多くあります。
タイプBは、あくまでも事業承継を進めるきっかけ作りとして活用し、本格的に進める場合は専門家の助言を得ながら進めることをおすすめします。
事業承継計画書(タイプB)を作成する
事業承継計画書(タイプB)を作成するには、最低でも下記項目を入力する必要があります。
- 現経営者の年齢、役職
- 後継者の年齢、役職
- 代表交代の時期
- 自社株の評価額(貸借対照表の純資産でもOK)
- 自社株式の持ち株比率(現経営者・後継者それぞれ)
- 株式移転の予定
- 後継者の役職の予定
- 後継者教育の予定(予算)
- 退職金の希望額(退職金規定の有無)
- 会計責任者の有無
- 現状の売上・利益
- 代表交代時の売上・利益予想
なお、上記項目で一番大事なポイントは、後継者にいつ、どのように経営権と株式を移転するか、という部分なります。
入力項目は幾つかありますが、改めて書き入れることで経営権の移転だけでなく他の項目においても、いつまでに、具体的に何をしなくてはならないのかが見えてくるはずです。
事業承継計画書作成の効果
事業承継計画書作成の効果をまとめます。
- 現経営者と後継者が向き合い、会社や家族のことを本音で話すきっかけを作ります。
- 現経営者の心の中にある見えない部分を可視化します。
- 可視化し共有することで後継者の疑問や不安を少しでも解消します。
- 事業承継でやるべき事を再認識しスケジューリングすることができます。
更には、各補助金申請や連帯保証を外す際に提出を求められる事業承継計画書に繋がる場合もあります。
このように、事業承継計画書を作成することは単に書類を作成するだけに留まらず、事業承継を進める上で大きな一歩を踏み出すことを意味します。
大切なのは、会社の現状と現経営者と後継者それぞれの思いを共有し、今後のスケジュールを決めていくことです。
事業承継をする可能性のある企業であれば、早急に「事業承継計画書」作成に着手することをおすすめします。
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