本コラムでは事業承継とイノベーションとの関連性について注目し、早くから事業承継に取り組むことの重要性を発信しています。
第1回では中小企業の厳しい現実と題して、今の中小企業の姿の厳しい現状を説明してきました。第2回では引き続き中小企業における事業承継の今について説明をします。
第②回 中小企業における事業承継の危機!そしてM&Aという道
1.事業承継における問題点
事業承継の問題は2000年代に入り、中小企業経営者の高齢化が進んでいることが中小企業の経営課題として認識され始めました。そして新規開業の促進だけでなく事業承継の支援も必要であると考え始められてきました。
特に2006年の中小企業白書において事業承継を特集したことで注目を浴び、2008年には「中小企業における経営の承継に円滑化に関する法律」が制定されました。その後特例を出すなど進展を図ってきましたが、2008年以降も事業承継の問題は収束することなく、今をもってなお大きな社会課題であり続けています。
結局、様々な施策を行っているにも関わらず事業承継は進んでいないのが現状なのです。
承継が進まない理由は複数あります。少子化、職業の多様性、主要企業の都市部への集中化等、様々なことが考えられます。
そして、中でも大きな理由は後継者不足の問題であります。日本の多くの中小企業はファミリービジネスであり、会社は子供が継ぐという文化で成り立ってきました。しかしながら、継ぐ子息のいない会社が多くあるのが現状です。
中小企業後継者不在率
上記の後継者不在率の推移を見ると。後継者の不在率は2021年に幾分か下がりましたが、それでも約60%以上の企業において後継者が不在という状況が見て取れます。
2.M&A
それに伴って、ここ数年は国による事業引継ぎ支援センター等の支援の枠組みや、第三者承継を進めるためのM&A専門会社も多く出てきました。そのため後継者不在であっても事業を継続する選択肢が増えてきました。
また、事業承継に対する考え方も変わってきています。以前はM&Aという言葉にネガティブな感覚を持っていた経営者が多くいました。ただ、ここ最近では事業承継の新しい手段の1つとして違和感なく選択をする経営者が多くみられるようになっています。
中小企業M&A実行件数
しかしながら、徐々に増えてきたM&Aの成約件数はそれでも年間数千件にとどまっています。約127万社あるといわれる後継者不在の会社数からは、まだまだ大きな乖離があると言わざるを得ません。
3.事業承継を進める意義
第1回のコラムでみてきた通り多くの中小企業は苦しい状況にあります。そして今回みてきたように事業承継が進まないことで、日本経済へのダメージは確実に大きくなっています。
では一体、多くの中小企業のはどうすればいいのでしょうか。その答えの一つは「早期に事業承継の実践を検討し実行する」ことだと考えます。
まずは早期に事業承継を検討することで後継者の目途を付けることが出来ます。早めに後継者のことを考えることにより様々な策を検討することが出来ます。
また、事業承継を検討し実行することは企業が飛躍する好機ともいわれています。実際に日本政策金融公庫のレポートには「事業承継は飛躍の好機」との記載があります。経営者が若返る、刷新することで多くのイノベーションが起き業績が向上した結果が出ているのです。(日本政策金融公庫総合研究所 鈴木 2015)
第2回では事業承継がフォーカスされた背景に始まり、現状の問題と傾向を紹介してきました。後継者不足という大きな社会課題はこの先も暫く続くことになりそうです。
次の第3回では、イノベーションの定義についてご紹介します。