2025年10月2日、「人的資本経営時代のDX人材育成~人手不足時代に”学ぶ組織”を作る~」をテーマにセミナーを開催いたしました。本記事では、セミナーの概要をご紹介します。

セミナーの背景
日本は今、構造的な人手不足時代を迎えています。2030年には644万人の人手不足が予測され、企業は「働く人を増やす」施策と「生産性を上げる」施策の両面から対応が求められています。
特に中小企業においては、DX推進率が14%と大企業の約3分の1にとどまり、75.3%の企業がDX推進に必要な専門人材不足を課題としています。この状況下で、人材への投資を通じた組織力強化が急務となっています。
本セミナーの3つのゴール
- DX推進に求められる人的資本経営を知る
- 人的資本経営を支える2つのポイントを理解する
- DXの一歩を踏み出し、支援できるようになる
人的資本経営の必要性
従来の「人的資源」という考え方から「人的資本」へのシフトが求められています。人材を消費する資源ではなく、投資によってリターンを生み出す資本として捉えることが、持続的な企業成長の鍵となります。
ノーベル経済学賞を受賞したゲイリー・ベッカー教授の理論では、教育や研修という投資によって人材の価値向上が可能とされています。特に注目すべきは、日本の人的資本は毎年38%陳腐化するという研究結果です。継続的な投資がなければ、企業の競争力は減少の一途をたどることになります。
DX人材育成の2つの柱
1. 能力開発
中小企業が優先すべきDXスキルとして、以下を重点的に取り上げました。
- ビジネス理解と課題発見力:自社業務フローを理解し、デジタル化で解決すべき課題を特定
- 現実的なデジタルツール選定力:限られたリソースで最大効果を出せるツール選定
- 社内巻き込み・推進力:変化への抵抗感を乗り越え、小さな成功体験を積み重ねる力
- 技術知識(基礎レベル):専門家と対話できる程度の基礎知識
重要なのは、一人でスペシャリストを目指すのではなく、チーム全体で補完し合う体制を構築することです。
2. 環境整備
DX推進には「心理的安全性」の確保が不可欠です。Googleのプロジェクト・アリストテレスでも、生産性の高いチームの最重要要素として心理的安全性が挙げられています。
具体的な施策として以下を紹介しました。
- 1分間感謝タイムや小さな成功体験の共有
- 15分間の短時間1on1の実施
- 質問を推奨する文化の醸成
- リーダーが「わからない」を示すことでの安心感創出
実践的アプローチ
人的資本経営視点での実践は3ステップで進めます。
- 見える化:スキル棚卸しや知識マップ作成で現状把握
- 小さく始める:毎週15分の勉強会など、実感できる施策から着手
- 仕組み化と外部連携:オンライン学習や行政支援制度の活用
中小企業向けには、健康経営との組み合わせや業務時間内での完結、手書きでも可能な簡素化など、現実的な実装方法をお伝えしました。
活用できる支援制度
セミナーでは、以下のような具体的な支援ツールも紹介しました。
- IPAマナビDX:無料で学べるDXリテラシー講座・デジタル実践講座
- 人材開発支援助成金:研修経費の45~75%、賃金助成800~1000円/時間の支援
これらを活用することで、中小企業でも投資効率を高めながらDX人材育成を進めることができます。
まとめ
人手不足が深刻化する中、人材への投資は「コスト」ではなく持続的成長を生む「戦略的投資」です。能力開発と環境整備の両輪で、学び続ける組織を作ることが、これからの時代を生き抜く鍵となります。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。本セミナーが、皆様の組織におけるDX推進の一助となれば幸いです。