今こそ知っておきたい「ビジネスアナリシス」

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あまり知られていない「ビジネスアナリシス」という分野

皆さんは「ビジネスアナリシス」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。「ビジネス分析」と訳されることもありますが、単なるデータ分析とは異なる、より本質的なアプローチを指しています。

実は、このビジネスアナリシスは、営業、SE、経営企画、情報システム部門など、様々な職種において必要とされるスキルでありながら、日本ではまだ十分に認知されていないのが現状です。しかし、ここ最近、企業からビジネスアナリシスに関する研修案件が明らかに増えています。デジタル化やDX推進の波の中で、多くの企業がこのスキルの重要性に気づき始めています。

そもそもビジネスアナリシスとは何か

ビジネスアナリシスとは、組織が抱える課題を明確にし、ステークホルダー間の合意を形成しながら、最適なソリューションを導き出すための一連の実践活動です。

従来のシステム開発では「何を作るか」が明確になっていないまま進行し、結果として使われないシステムや、本来の課題を解決できないプロジェクトが散見されました。ビジネスアナリシスは、こうした問題を根本から解決するために、「本当に解決すべき課題は何か」「誰のために、何を実現するのか」を明らかにする手法なのです。

営業担当者であれば顧客の真のニーズを引き出す場面で、SEであればシステム要件を定義する際に、経営企画であれば戦略立案のプロセスで、それぞれの職種においてビジネスアナリシスのスキルが活きてきます。

世界標準の知識体系「BABOK」と6つのコアコンセプト

ビジネスアナリシスの知識体系として、国際的に認められているのが「BABOK®(Business Analysis Body of Knowledge)」です。BABOKは、国際ビジネスアナリシス協会(IIBA®)が策定した、ビジネスアナリシスのベストプラクティスを体系化したガイドです。

BABOKでは、ビジネスアナリシスを支える6つのコアコンセプトが定義されています。

  1. 変化(Change)
    組織における変化のニーズを特定し、変革を推進します。
  2. ニーズ(Need)
    ステークホルダーが抱える問題や機会を明確にします。
  3. ソリューション(Solution)
    ニーズに対応する具体的な解決策を定義します。
  4. ステークホルダー(Stakeholder)
    変化に関わる全ての関係者を特定し、協働します。
  5. 価値(Value)
    ソリューションがもたらす便益を評価します。
  6. コンテキスト(Context)
    組織の状況や環境を理解し、適切なアプローチを選択します。

これらのコアコンセプトは、相互に関連し合いながら、ビジネスアナリシスの実践を支える基盤となっています。単にツールや技法を学ぶだけでなく、こうした概念的な枠組みを理解することで、様々な状況に応じた柔軟なアプローチが可能になります。

国際資格「CBAP®」という証明

ビジネスアナリシスのプロフェッショナルとしてのスキルを証明する国際資格が「CBAP®(Certified Business Analysis Professional™)」です。

CBAPは、実務経験とBABOKに基づく知識の両方を求められる、ビジネスアナリシス分野における最高峰の資格です。取得には7,500時間以上の実務経験と、厳格な試験への合格が必要とされます。日本での認知度はまだ高くありませんが、グローバル企業では重要な専門資格として評価されており、プロジェクトマネジメントにおけるPMP®と並ぶ価値があると認識されています。

CBAPのほかにも、エントリーレベルのCCBA®(Certification of Capability in Business Analysis™)や、要件分析とデザインに特化したCBDA®(Certification in Business Data Analytics™)など、段階的な資格制度が整備されています。

なぜ今、ビジネスアナリシスが注目されているのか

冒頭でも触れましたが、ビジネスアナリシスの研修案件は確実に増加しています。その背景には、いくつかの要因があります。

第一に、DX推進の必要性です。デジタル技術を導入すれば自動的に変革が起こるわけではありません。「何のためにデジタル化するのか」「どのような価値を生み出すのか」を明確にする必要があり、そこにビジネスアナリシスのスキルが不可欠なのです。

第二に、プロジェクトの失敗を減らしたいというニーズです。システム開発の失敗事例の多くは、要件定義の段階での問題に起因します。ビジネスアナリシスの手法を活用することで、プロジェクトの初期段階から適切な課題設定とステークホルダー管理が可能になります。

第三に、組織横断的なコミュニケーション能力の重要性です。現代のビジネスは複雑化しており、一つの部門だけで完結することはほとんどありません。異なる立場の人々をつなぎ、共通の目標に向かって協働を促すスキルが求められています。

ビジネスアナリシスに触れてみませんか

ビジネスアナリシスは、特定の職種だけに必要なスキルではありません。顧客と向き合う営業担当者、システムを設計するSE、戦略を描く経営企画、変革を推進する情報システム部門―あらゆる立場の方が、日々の業務の中でビジネスアナリシスの考え方を活用できます。

「何となく進めている会議がうまくまとまらない」「プロジェクトがいつも途中で迷走する」「関係者の意見がバラバラで前に進まない」―こうした課題を感じているなら、それはビジネスアナリシスのアプローチが解決の糸口となるかもしれません。

BABOKという体系化された知識があり、CBAPという国際資格もあります。まずは基本的な考え方に触れることから始めてみてはいかがでしょうか。研修の機会があれば積極的に参加し、実務の中で少しずつ実践してみることをお勧めします。

変化の激しい時代だからこそ、「本質的な課題を見極め、価値あるソリューションを導き出す」ビジネスアナリシスのスキルは、キャリアにおける強力な武器となるはずです。

With-ConsultingLab では、ビジネスアナリシスに関する研修やコンサルティングも提供しております。ご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

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