廃業の検討
「廃業」とは、一般的に経営者が自主的に経営をやめること、消滅させることをいいます。第13回では、M&Aについて書きましたが、後継者が不在の企業の選択としてM&Aが難しい場合は、最終的に廃業を選択せざるを得ない状況となります。
特に最近では、中小企業や小規模事業者における廃業が増加しています。背景としてはオーナー経営者の高齢化や後継者不在が原因となっています。
後継者不在の場合、M&Aか廃業のどちらかを検討することになります。M&Aは近年増加傾向にありますが、時価評価額の問題や買収企業との調整がつかないことにで不成立となるケースも多くみられます。そうなると廃業を選択せざるを得えません。
廃業を選択することは経営者にとって苦渋の決断であり、踏ん切りがつかないケースも多くあります。しかし、廃業には多くの所定の手続きが必要であり、時間とお金が掛かります。
そのためにも、いつまで会社を継続させるのか、廃業した後の生活をどうするのか等、様々なことを考えながらも廃業を計画的に進めていくことが重要です。
目次
1.廃業の実態
ここ数年、年間で約40000件超の企業が休廃業や解散しています。2022年以降もコロナ融資の引き上げによって、多くの中小企業が廃業や解散を選択するかもしれません。
ちなみに、まぎらわしい言葉として「解散」「清算」「倒産」「休廃業」などがありますので、参考に言葉の定義を載せておきます。
- 解散・・・廃業手続きを開始するためのスタート地点であり、会社法により7つの理由が定められていますが、ほとんどが株主総会の決議によるものです。
- 清算・・・資産や負債が残った状態から「清算」手続きによって資産の売却や債券の回収などを行います。ちなみに、「破産」は「清算」の一種になります。
- 倒産・・・「倒産」には法的な定義がありません。また、「破産」とも異なる意味を持ちます。一般的には資金繰りができず取引先や従業員への支払い不能に陥り、会社の経営ができなくなることを指します。
- 休廃業・・・特定の手続きをとらず、資産が負債を上回る資産超過状態で事業を停止することを休廃業と言います。
2.廃業の進め方
会社の廃業は法律に則って行う必要がある
会社の営業を事実上終了しただけでは、廃業したことにはなりません。会社を廃業するには、法律で定められた手続きを、1つ1つ順を追ってこなす必要があります。
会社を廃業するときには、株主総会の決議や官報への公告、法務局での登記、税務申告など、やらなければならないことがたくさんあります。
特に、官報公告をするときには、2か月以上の期間をとることが会社法上要求されています。廃業の手続きをして会社を閉鎖するまで、最短でも2か月はかかってしまうことになります。
廃業して会社を清算する手続
廃業して会社を清算するのための主要な手続や処理は以下のとおりです。
- 解散の準備
- 株主総会での解散決議
- 清算人の選任
- 解散・清算人選任登記(※解散日から2週間以内)
- 解散の届出
- 社会保険関係の手続き
- 解散公告
- 解散時の決算書類の作成
- 解散確定申告(※解散日から2か月以内)
- 債権回収、債務弁済など
- 残余財産の確定・分配
- 決算報告書の作成・承認
- 清算結了登記(※決算報告書承認後2週間以内)
- 清算確定申告(残余財産確定日から1か月以内)
- 清算結了届
このように廃業するためには多くの手間と作業を必要とします。また、場合によっては自分だけで対応出来るわけではないため、専門家に依頼する場面も出てきます。計画する上ではこれらのことを加味した上で進めていく必要があります。
廃業に必要な費用
会社が廃業するためには、通常、以下のような費用がかかります。
※倒産手続を取ることなく通常清算手続で廃業できる場合の費用。
※破産等の倒産手続が必要な場合、費用は変わります。
登記費用
解散及び清算人選任登記 | 39,000円(登録免許税) |
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清算決了登記 | 2,000円(登録免許税) |
会社を解散して清算人を選任したら、その登記を行うことが必要です。また、清算手続が終了したら、清算決了登記を行います。それらの登記を行う際、法務局に納める費用を登録免許税といいます。
官報公告費
官報公告費 | 4万円前後 |
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解散した会社には、債権者に解散を知らせ、一定期間内に債権申出(届出)を行うように求める官報公告(解散公告)を行う義務があります。
専門家の手数料・報酬
登記を司法書士に依頼する場合 | 5万円~10万円程度 |
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税理士に確定申告を依頼する場合 | 15万円~30万円程度 |
弁護士に廃業・清算の全手続を依頼する場合 | 数十万円~100万円程度 (登記・税務申告手続を除く) |
その他費用
登記事項証明書の取得費用など | 数千円程度 |
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さいごに
廃業には時間と手間がかかります。ただし、それ以上に廃業に向けた決断や家族に対する報告など、経営者にとって辛い作業が沢山あります。
ここ最近は廃業に向けた支援を行う会社も出てきています。どうしても自分で進められない場合は外部機関を頼ることも一つの手段です。
廃業を選択するのであればベストな廃業の進め方をご検討下さい。